頭蓋、顔、あごの骨の高度な変形に対して頭と顔の骨を頭蓋の内外から同時に切って移動して、形態や機能を形や位置を手術的に修正して顔貌を修正する手術概念を頭蓋顎顔面外科クラニオフェイシャルサージャリーと言い、1960年代にフランスのPaul Tessier(ポール・テシエ)先生が創始しました。
わが国では慶應形成外科の中嶋が1979年に初めて創始者であるTessier先生のところへ留学し、基本的な考え方や手技を学び、1981年に日本で初めて慶應義塾大学病院において頭蓋顎顔面外科を開始しました。その後、限局的であった手術範囲を広め、頭蓋顔面全体を手術する方法や、三次元CTを用いた手術シミュレーションシステムを世界に先駆けて開発し、現在のシミュレーション外科の先駆けとなりました。
また、クラニオフェイシャルサージャリーの手技と脳神経外科の手術法が連携して、今まで到達できなかった頭蓋底の腫瘍切除が可能となり頭蓋底外科skull base surgeryという手術概念・分野の確立に貢献しました。頭蓋底、眼窩、鼻腔にまたがる手術では組織の大きな欠損が生じる場合が少なくなく、皮弁という形成外科の最も基本的で重要な手術手技が同時に必要になります。また先天性の顔面の形態異常の再建では、最終的な段階では美容外科的なセンスと手技も必要となってきます。
つまり、クラニオフェイシャルサージャリーは形成外科としての総合的な力が必要とされ、その力量によって結果が大きく左右されます。私たちは皮弁の領域でも基礎的・臨床的に多くの業績をあげてきており、現在まで一貫して最も先端的で革新的な手術法を開発し続け、その総合力・頚肩度の高い施設として自認しております。
また私達形成外科医は単に患者さまの傷害された部分局所の医学的な修復を図るだけでなく、外観の障害はつまるところ《心の障害》であり、形成外科医は『心に残った瘢痕』をいかに癒し、患者さまの真の社会復帰をサポートするかが使命であるとの思いを基本的な理念とし、美容的・心理的ケアも重視した治療を行うよう心がけています。
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