頭蓋骨縫合早期癒合症に対して、その狭くなった頭蓋を拡大する手術法です。以前は頭蓋骨を一度すべて外して、それを竹細工のように組みかえて行う方法(Bamboo-Ware Method)を行っていました。結果的には良好な頭蓋形態が得られますが、手術時間が半日以上に及び、出血量も多く、手術ストレスが非常に高いという問題がありました。そこで、1999年にさらに発展させ骨延長法を用いたMoD法を開発しました。従来より骨延長法を用いた頭蓋矯正はありましたが、延長方向が限定されて理想的な形に拡大できなかったり、その適応も頭の形に制限がありました。さらに頭に大きな金属の輪を固定して延長するなど、患者さまの生活が著しく制限されることも問題でした。
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MoD法は頭蓋骨をある一定のルールで細かく切っておき、狭くなっている骨を拡大するように徐々に広げていくと、広くなりすぎている骨は自動的短縮し、正常な形と大きさが得られるという慶應で開発された手術法です。たとえて言うなら、両手のひらに強力なノリをつけて風船をつかみ、両手を離していけば、離す方向には延長される一方で、それとは垂直方向は縮むことになります。この方法は頭蓋骨は外さず溝を掘るだけで、組み替えも行わないために、手術時間も3〜4時間程度で、出血量も格段に減り、さらにあらゆる頭蓋変形に対応できる術式です。そしてこのMoD法を可能にする骨延長器を開発(特許申請中)し、1999年からMoD法を40人に施行し(2009年12月現在)、大きな合併症は認めず良好な結果を得ております。
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MoD法の原理
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MoD法を可能にした延長器AVD system
従来のようにヘルメットや金属の輪を頭につける必要がない
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治療の流れは、まず1回目に骨延長器を数本設置します。そしてこの手術から1週間後に延長を開始します。患者さまにより延長量は異なるため、入院期間はそれぞれですが、平均1か月前後となります。MoD法は一部の延長を補助し、ほかの部分はヒトの持つ力にまかせ、無理な延長は行わないため、自然な形態となります。退院後は延長した隙間に骨(仮骨)ができるのを待ちます。これを保定期間と呼びます。1か月ほどで骨はできていますが、他の延長法のように金属の輪などがなく、延長器が体外に露出しないため、そのまま日常生活が可能であり、他者の目を気にする必要もないため、十分に骨ができるのを待ち、2〜3か月の保定期間をおきます。そして再び入院していただき、延長器の抜去を行います。この2回目の入院は2〜3泊程度でOKです。 |
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舟状頭(頭の奥行きが長い)症例
術前(左)、延長中(真ん中)、術後6年目(右)
骨を細かく切り分けて、頭を横に広げると、自分の力で奥行きが短くなってくる。 |
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多数の縫合が閉鎖した(頭が幅も奥行きも狭い)症例
術前(左)、術後5年目(右)
横幅も奥行きも改善している。 |