コラム

クラニオって?

頭蓋、顔、あごの骨の高度な変形に対して、その骨を切って移動して、形態や機能を修正する手術概念を頭蓋顔面外科=クラニオフェイシャルサージャリーと言います。このセンターが小児頭蓋顔面(クラニオ)センターになっているのは、この分野のことを通称クラニオと略していうからです。

このクラニオフェイシャルサージャリーの父と言われているのが、フランスのPaul Tessier(ポール・テシエ)先生です。彼が活躍していたのは1960-80年代後半ですから、医学の歴史でみれば、非常に最近の出来事です。

クラニオフェイシャルサージャリーの父 フランスのPaul Tessier(ポール・テシエ)

Paul Tessier先生(伝記「A Man from Héric」より)

実は彼の登場以前にも頭蓋顔面外科は存在していましたが、その治療対象は戦争で負傷した兵士たちでした。Tessier先生はその技術を飛躍的に応用して生まれつきの病気の人たちの治療に使いました。今でこそ彼の考えた手術手技は一般的なものになりましたが、Tessier先生一人の技術では困難であり、同僚の脳神経外科医であるGerard Guiot先生に協力をお願いしました。彼らは日頃同じ病院に勤務し、Tessier先生は脳神経外科の再建手術を手伝う間柄でした。当時としては誰もやったことのない突拍子のない手法をTessier先生がGuiot先生に提案した際、Guiot先生はPourquoi Pas?(英語でいうWhy not?日本語では“もちろん”“いいよ”というニュアンス)と答えたそうです。それはTessier先生の考えた手法が、お互いが協力すれば可能であることをこれまでの経験が実証していたからだと思います。こうしてクラニオの手術治療には脳神経外科医と形成外科医が協力して治療に当たる伝統が生まれました。

国際頭蓋顔面学会(International Society of Craniofacial Surgery)のロゴにも使われている“Pourquoi Pas?”