対象疾患

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

赤ちゃんのおでこの少し上を触ると柔らかいところがあります。この部分を大泉門とよび、脳が成長できるように(生後1年で約2倍の大きさになります)、赤ちゃんの頭の骨はすきまがあるとともに、完全にはくっついていない状態になっています。このつなぎ目のことを頭蓋骨縫合と呼びます。

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

頭蓋骨縫合早期癒合症とは、何らかの原因でこの縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう病気です。頭蓋骨縫合が早期に癒合してしまうと、頭蓋容積が大きくならず頭蓋骨の変形やときには頭蓋腔が狭いために脳圧亢進症状(精神発達障害や視力障害など)を呈することになります。また癒合する縫合の種類により様々な形になります。本邦での発症頻度は2000-5000人に1人と幅がひろく、はっきりとはわかっていないのが現状です。それは寝ぐせと診断されて、この病気が見過ごされていることが少なからずあるからです。

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

頭の変形だけでなく、さまざまな変形を合併することもあります。眼球突出をともなうクルーゾン症候群、眼球突出と手足の問題を合併するアペール症候群、ファイファー症候群など代表例です。最近では胎児診断で早期に診断がつくこともあります。ご希望の方には出産前に疾患や当院での治療方針につきご説明いたします。

治療方法は年齢や症状によって決定します。具体的な治療の流れは下記のようになります。

治療の流れ

(画像をクリックすると拡大できます。)

より早期に病気が発見されてた場合には、縫合切除術が適応となります。

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

この方法は他の手術方法に比べて低侵襲であり、癒合してしまった骨を切除して、脳の自然な発育に委ねて広げていく方法です。この方法ですと入院期間はおよそ術後1週間ほどです。

やや年齢が上になった場合には頭の形を一度で作ってしまう頭蓋形成術が適応となります。

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

頭蓋形成術のメリットは、後述する骨延長術に比べて入院期間が短く(およそ術後1週間ほど)、そしてきれいな頭蓋形態を作ることが可能です。術後は頭を大きくしたことにより、一部に骨のないすきまができてしまいますが、年齢が小さいと、その後、徐々に自分の力で骨ができてきます。

ただ年齢が大きくなると、その骨の隙間を埋める力がなくなってしまいます。そういった場合には少しずつ頭の大きさを大きくしていく骨延長術を選択します。 この方法は年齢が小さくても、クルーゾン症候群などの症候群性の場合など、非常に大きく頭蓋を拡大する必要がある場合にも適応になります。それは皮膚が縫いとじれなくなってしまうからです。

頭蓋縫合早期癒合症(頭蓋形成術)

この方法ですは、術後しばらくしてから1日1ミリずつ大きくしていきます。皮膚はそれに合わせて風船のように伸びていくことができ、頭蓋形成術よりも頭蓋骨をかなり大きくすることができます。ただ入院期間は術後約1か月と長くなり、またしばらくしてから延長器を取り外す手術をしなければなりません。
また症候群性の場合には一度の頭蓋拡大のみならず、成長に伴って、複数回の治療が必要になることもあります。