コラム

後継ぎ問題

Tessier先生がはじめた頭蓋顔面外科は、頭蓋・顔面の土台となる骨に手を加えることでその容姿を一気に変貌させるため、世界中の形成外科医にセンセーションを起こさせました。そのため、その技術を我がものにして、本国に持って帰ろうと多くの形成外科医がTessier先生のもとに留学しました。これは日本も例外ではありませんでした。そして1990年代には日本にも多くの頭蓋顔面外科医がいました。彼らの学会での活動は、まさに頭蓋顔面外科は形成外科医としての花形といった雰囲気でした。

この先生方がこぞって定年退職されたのが2010年以降。そこで起きたのが跡継ぎの頭蓋顔面外科医がいないということでした。一見、花形に見えた頭蓋顎顔面外科の実状は、チーム医療もまだ完全ではない時代でしたので、それは肉体的にも精神的にもあまりにもきついものでした。そのため、頭蓋顔面外科の敷居をまたいでも挫折する医師がほとんどだったのです。

それでも絶えることはなく、その技術と意志を継承した医師が今も本邦にはいます。患者さんが路頭に迷わないためにも、後継者をきちんと育てることも私たちセンターの使命です。