小顎症とは上あご(上顎骨)に対して、下あご(下顎骨)が著しく後退したです。原因としては、トリ―チャーコリンズ症候群やピエールロバン症候群のような遺伝的な因子によるものがあります。その他にも、幼小児期の下顎骨の骨折などによっても起こります。
下顎骨の先端をオトガイとよびますが、小顎症の場合、この部分が後退しているために、あごと首のくびれが小さくなります。また小さい顎でも永久歯は普通サイズですので、歯並びが悪くなります。また上顎の前歯は出っ歯のように突き出ることがあります。
小顎症では、空気の通り道が狭くなって、大きないびきをかきやすくなります。呼吸障害の程度が強い場合には、生後まもなく、喉を切開して空気の通り道を確保したり、うまく飲みこめない(嚥下障害)ために胃の中にチューブを入れて栄養を与えることも必要となる場合があります。
小顎症のうち、特にトリ―チャーコリンズ症候群では頬骨や眼のまわりにも変形を及ぼすことがあります。最近では顔面をカモフラージュするために乳児期に脂肪移植を行うことがあります。
下顎骨の後退に関しては、矯正歯科医との連携が必要となります。顎成長がほぼ完了する思春期以降に美容外科的な技術を用いた骨切り術と骨延長術などを併用して、顔貌と症状の改善を行います。
基本的には思春期以降が最もよい治療時期となりますが、呼吸状態や特徴的な顔つきは学校生活の妨げになることもあります。そういった事情を考慮して治療時期を決定します。