クルーゾン症候群やアペール症候群、口唇口蓋裂などのように顔面骨の発育に問題があると、(眼球突出)や歯のかみ合わせの問題(受け口:反対咬合)が生じます。こうした症状は成長とともに目立ってきます。成長途中に手術を行ても、その後の成長で、再び症状がでてきてしまうことがあるため、通常は顎の成長が終わった15〜16歳以降に顔貌を改善させる手術を行います。
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手術の正式名称はLe Fort(ルフォー)型骨延長術といい、ルフォー型骨切り後に骨の延長を行います。骨の切り方はT型からW型まで全部で4つのタイプがあり、通常はルフォーV型やW型の骨切りが行われます。しかし眼球突出の程度と咬合不全の程度が異なることは少なくなく、この術式では両者のバランスをとることが難しいことがあります(こうした分析は矯正歯科医とともに行います)。その場合には、さらにルフォーT型の骨切りを加えて、移動量を調節することでバランスのよい顔貌が得られるようしています。 |
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青い棒のようなものが延長器 NAVID system
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また従来の方法では、移動により生じる隙間に骨を移植する必要がありましたが、MoD法と同様に骨延長法を用いて行うことで患者さまの負担を軽減いたしました。さらにMoD法からの経験をもとに、2次元3次元方向に延長可能な骨延長器 NAVID system(特許申請中)を開発しました。
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NAVID System (一例)
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NAVID systemの最大の利点は負担の少なさです。私たちの方法では、まず1回目に延長器を数本設置します。この手術は本来であれば頭皮を横断する冠状切開を必要としますが、W型以外のときには必要としません。手術後1週間してから延長を開始します。レントゲンやCTを撮影し実際に顔貌を見ながら延長を行います。この延長量により入院期間は異なります(延ばし終われば外来通院となります)。微調整としてきれいな歯並びにするために矯正歯科医に矯正をお願いすることもあります。そして骨が十分にできるまで延長器をそのまま置いておきます。このとき延長器は皮下に収まるため、日常生活にほとんど支障がなく、延長器を取り外すときに、骨移植やプレート固定も必要とせず、後戻り(再発)をすることもありません。延長器抜去も小切開で行えます。これらは、欧米や我が国の一部の施設で中心的に行われている頭蓋外周固定式のハロー型骨延長法型(レッド・ブルーシステム)にはない大きな利点です。 |
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クルーゾン症候群に対するルフォーV+T型骨延長
保定期間中も他の延長器に見られるような目立つ装置はない
(左:術前、右:保定期間中)
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さらにNAVID systemは、Hemifacial Microsomiaに対する上下顎同時骨延長の際にも使用可能であり負担の少なさと有用性から、さまざまな骨延長に利用可能です。 |
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