脳腫瘍切除や、交通事故などの外傷により頭蓋骨の一部がなくなった場合、外見上、その部分がくぼんでしまうだけでなく、脳を保護する硬いもの(=骨)がなくなり、非常に危険です。そうしたときに行うのが頭蓋再建です。脳を保護しなければならないため、通常は硬い組織を使う必要があるため、自分の骨(自家骨)や人工骨が使われます。
自家骨で作る場合には、他の部分の頭蓋骨をとってきて、それを薄く2枚にスライスして使用したり、あるいは肋骨や腰骨を使用します。こうした自分の骨を使うメリットは自分の骨なので頭蓋骨と同一化していくこと、感染に強いことです。しかしデメリットとしては、骨を取ってくる部分に負担がかかります。また取った骨を欠損部に合わせて、その場で細工をするので、全体としては手術時間が非常に長くなります。
一方、人工骨は、その材料にはチタンやハイドロキシアパタイトとよばれるものがあります。これらは生体親和性が高く、拒絶反応は少ないと言われています(非常にまれにチタンアレルギーの方がいます)。最大のメリットは、手術の前にあらかじめCTデータから実体模型を作製し、欠損部にフィットするものを作成するため、見た目もよいだけでなく、手術時間の短縮になります。また採取部の犠牲もありません。デメリットとしては、血が流れない組織のために感染に弱いことですが、メッシュにすることで上下層の組織が癒着するようにして、この問題に対処しています。
最近では、その場で自在に形を作り、30分すると固まるというペースト(ねんど)状の人工骨も登場しています。
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後頭部の頭蓋欠損に対してチタン製人工骨をあらかじめ作成し、再建した症例
(左:術前、右:術後半年) |
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自家骨を使うか、人工骨を使うかは、欠損部の大きさなどによります。欠損部が小さくて感染の危険性がある場合には自家骨が優れていますし、欠損があまりに大きい場合には人工骨のほうが優れています。このように患者さまの病態とご希望に合わせて使い分けしております。
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